第1回 演奏前の基礎知識 構え方、呼吸、他
自分の出したい音をイメージしながら演奏しよう!
バンドピープル読者の皆さんはじめまして今年のセミナーを担当する沼田 司です。
一言で言うとフリーランスのバストロンボーン奏者です(コントラバストロンボーンは持ち替え)。普段はいろいろなオーケストラスタジオでの録音、室内楽などの演奏活動をしています。
ザ・ハイパートロンボーンズ、アーク・トロンボーン四重奏団、ヴィヴィッド・ブラス・トーキョウでも演奏しています。又、年に数回はジャズのビッグバンドにも参加します。私の演奏をじっくり聞きたいというマニアの方は「ゴジラ対デストロイヤ」のサントラ盤(後半分を演奏)を聞いて下さい。
そういう音楽三昧の生活をしていると文字というものは全く書きません。最近字を書いたのは年賀状の宛名かギャラの領収書のサインぐらいです。もうこの時点で何と大変な事を引き受けてしまったかと大後悔していますしかし、一度執筆すると決めたからにはプロ奏者生活12年のノウハウを紙面の許す限り伝えようと考えています。
音楽が好きですか?憧れのプレイヤーは?
私は初めてレッスンする生徒にこの質問をします。すると全員が音楽が好きと答えます。あたりまえですね。ここで嫌いという人は帰ってもらうしかありません。
では憧れのプレイヤーは?と聞くとかなり色々な反応があります。知っているプロ奏者を知っている限り挙げる人。逆に一人も知らない人・・・こういう人が結構多いのです。
考えて見てください。例えば野球部の人でプロ野球選手を一人も知らない人がいるでしょうか?サッカー部の人でプロサッカー選手を一人も知らない人がいるでしょうか?
イメージがなければ上達しない!
サッカー、野球をする人達は名選手のファインプレーを見てそれに憧れそれに近いプレイをしようとイメージをもって練習します。
音楽でも同じ事が言えます。プロ奏者を一人も知らない。ということは憧れの演奏、音のイメージが頭にない。ということです。
練習するときは必ず『どんな音を出したいのかイメージする』のが大切です。言い替えればイメージが無ければいくら練習しても上達しないということです。
イメージをつけるには?
それは演奏会に出かけ音を生で聞くことです。でもそんなに頻繁に行けません。そこでCD,LD,ビデオの登場ですがそれらもそんなにたくさん買えませんよね。そのときはFM放送のエアチェックです。ジャンルは問いませんがトロンボーンは毎日聴きましょう。
他にオーケストラ、オペラ、室内楽、吹奏楽、ジャズ、ポップス、歌謡曲、演歌など何でも構いません。それらが全てあなたの音楽になるのです。(毎回お薦めのCDを紹介します)しかしやはりライヴにかなうものはありません。又、絵を観たり本を読んだりして感性を磨くのもとても大切です。
効率よく練習するために
一口に練習と言ってもいろなものがあります。効率良く練習するために私は下記のように分けて考えています。
ウォームアップ・・・眠っている体(筋肉)と感覚を起こし、練習できる状態にします。
基礎練習・・・デイリーエクササイズも含まれます。楽器をコントロールする能力を身に着けます。
合奏の為の練習・・・基礎練習で身に着けた能力を使い楽譜に描かれている音符を正確に演奏します。
合奏練習・・・正確に演奏できたパッセージを駆使しセクションや他の楽器とのバランス、ブレンド感、音楽の流れを考えます。
本番・・・今までの練習の集大成。練習で得たことを全て把握し、細心の注意を払いながらも大胆に音楽に身をゆだねて全身で喜びを感じます。
本番のあとは・・・当然、仲間たちと一緒にビールを飲んで騒ぎ、語り合う。(実は結構大切だったりする)
以上のことを考えながら効率の良い練習をしましょう。その具体的な方法は次回から。
持ち方、姿勢で音が良くなる!
持ち方や姿勢で音が良くなる?そんなことで良い音がするなら練習しなくてもいいじゃないか。と思うでしょう。しかし効率の良い練習の為には必要なことです。
楽器は左手だけでしっかり持ちましょう。何度も言われたことです。しかし、はたして実際そのとうりに持っているでしょうか。実験してみましょう。
まずスライドのストッパーを掛けます。(必ず掛ける事)次にいつも演奏するように構えます(音は出した方がわかりやすい)。そして右手を降ろし、そのまま30秒位じっとします。どうでしょうか。最初の姿勢のまま動かないでいれたでしょうか。左手や肩、降ろしている右手に必要以上に力が入っていませんか。
再び楽器を構えましょう。今度はスライドを1~6ポジションまで何度か速く動かしてみて下さい。Fロータリー付きの楽器を使っている人は親指、2ローターの楽器は中指を速く動かしてみてください。その状態を鏡で見ると楽器が上下左右に動いていませんか。 余分に力がはいったり動いたりしなければ合格です。効率の良い練習ができます。
ではなぜ余分に力がはいったり動いたりするのがいけないのでしょうか。
体の筋肉は全てつながっています。腕や肩に余分な力が入ってしまうと唇まで力が入ってしまい硬い音色になります。又スライドやレヴァーを動かしたときに楽器が動いてしまうと何かのパッセージを吹いたときマウスピースが、ぶれてしまい唇の振動が楽器にうまく伝わりません。
オーケストラ、吹奏楽におけるトロンボーン
オーケストラ、吹奏楽での旋律のほとんどは弦楽器か木管楽器が担当しています。その合間にトロンボーンがいろんな形で登場します。主にハーモニーの充実、フォルテの補強などが大きな役割です。そのためトロンボーンはほとんどの曲で3本(テナー2、バス1)で書かれチューバを加え4本でセクションを組みます。
ハーモニーを創るのはトロンボーンの醍醐味です。ブラームスの交響曲一番の四楽章の冒頭に最高に美しいコラールがあります。 フォルテの爽快感もトロンボーンならではのものがありますが、自分だけが気もち良くても何の意味もありません。トロンボーンは大きな音が出やすい楽器です。音色に細心の注意をはらうべきです。フォルテこそ美しく演奏しましょう。
旋律もあります。トロンボーン奏者にとって最も緊張する曲の一つにラヴェル作曲のボレロがあります。これらの曲を知らない人は先生に聞いて見よう。
バストロンボーンについて
私の自己紹介を読んだ読者はアレッ?と思ったでしょう。私はバストロンボーン奏者なのです。ならばなぜこのセミナーを執筆できるのか。基本的な所はテナーもバスも同じだからです。しかし決定的に異なる部分もあります。音色、音域や合奏時の役割です。
見た目の違いはテナーより管が太くベルが大きくF管のロータリーが最低1つ付いています。2つめのロータリーはG管、Ges管、並列(OutLine)、直列(InLine)など器種によって違い使い方は今後説明していきます。どの機種を使うかは好みですが、ロータリーが2つの方がよりバストロンボーンらしいでしょう。(私は直列2ロータリーGes管を使用)
オーケストラや吹奏楽でのバストロンボーンの存在は特殊です。まず一人です。使われ方はトロンボーンセクションの外声、トロンボーンチューバセクションの内声、チューバと2本での動き、他の金管楽器、木管楽器や弦楽器、打楽器とのハーモニーなど様々です。 セクションを造るときはテナー2本バス1本で造ります。(まれにアルトトロンボーン、コントラバストロンボーンが入ります)テナー3本のセクションはあくまでもバストロンボーンの代用だと思って下さい。
バストロンボーンが加わると響きは格段に拡がり、安定感が大きく増します。
これからのセミナーのなかでもバストロンボーンの為の練習法を紹介します。
来月から具体的な練習法を紹介します。
今すぐ練習したい人はマウスピースだけでピアノ等で音を取りながら吹いておいてください。(私は毎日30分以上練習しています。)その理由は来月。
写真の解説
姿勢
1.決して力まず、自然に立つことをイメージし鏡を見てチェック。
2.座った時と立った時の上半身は同じ。(写真自体が右上がりに曲がっているので、注意)
3.座ったときは背もたれに寄りかからない。(浅く座らず深く座る事→重心が安定する)
持ち方
4.左手は薬指、小指でしっかり下の管を握る。
5.中指は常にレヴァーに掛けなくても良い。
6.スライドは指先で軽くつまむ。下記の補足を参照。
7.右手指先で軽くつまむように持つ。
8.このように持つと正確なスライディングができない。
9.右手をスライドから離す時は左手の小指をスライドにかけ落ちないようにする。(習慣にすること)
ホームページ掲載のための補足
6.の写真では手のひらが自分の方を向いているが、手のひらが下を向いていた方が、スライドを動かしやすい。
理由・・・人間の腕の2本の骨、筋肉のつき方が自然とそうさせる。
実験・・・1.楽器無しで空中で手のひらを、自分の方に向けてスライドを動かすように前後させる。
2.今度は手のひらを、下に向けて同じように前後させる。
1と2の両者を比べると2の方がストレスなくスムーズに腕を動かしやすい事に気づくと思う。