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第8回 音 程

良い音程は良い音色から

 こんにちは。ダイナミックスの幅は少しづつ拡がってますか。何度も書いていますが、常にイメージをもって良い音色で練習しましょう。

正しい音程とは?

 だれでも正確な音程で演奏することを目指しています。私自身、音程は大きな悩みであり一生の課題です。
 さて正しい音程とは一体何でしょうか(ここでは正確な音程とは意味が違います)。色々な答えが予想されます。常にA=442Hz(日本のほとんどのオーケストラの標準ピッチ)を基準にした音程。アメリカ系のオーケストラが好きなのでA=440Hz、ドイツ系のオーケストラが好きだからA=444Hzと様々な人がいます。みんな間違いではありません。しかし、2人以上で演奏するときは音程を合わせなければなりません。自分勝手に、この音程でないと良い響きが出せないとか、全体の音程が443Hzと上がっている中でこれが正確な440Hzと言って、一人で違う音程で演奏してしまうと一人だけ浮いてしまい音楽を壊してしまいます。正しい音程とは皆とブレンドする音程です。音楽は全員で造り上げるのです。
 この正しい音程で演奏するには色々な課題をクリアしなければなりません。何よりも周りの音程と自分の音程の違いを判断する耳が必要です。

耳を鍛える

 音程の違いを判断する耳を鍛えるためにはある程度トレーニングをし、それを続けなければなりません。2、3才の頃からピアノなど習っている人には絶対音感が身に付いている場合が多いのですが、私のような普通の人はトレーニングをします。次に私のトレーニング法を紹介します。
 ピアノがある静かな部屋で練習します。ピアノはグランドピアノで蓋は全開にします。なければアップライトでも構いませんが上の蓋は開けます。電子ピアノやシンセザイザーなどはこの練習には使えません。必ずアコーステックな物を使います。
 ピアノのペダルを踏みながらトロンボーンで好きな音をロングトーンします。ペダルは踏んだままです。すると同じ音程でピアノが共振します。そこで初めて鍵盤で同じ音を弾きます。どうですか。同じ音程で響いていますか。この方法は音程の違いを自分の耳で認識するトレーニングなのです。

正しい音程は良い音色から

 色々な音を聴いて良い音程と感じるのはどのような音でしょうか。汚い力ずくで出した音、響きが上ずったり、ぶら下がったりした音、芯のない「ふにゃふにゃ」した音などには、音程を感じたり聞き取ることができません。たとえチューナーの針がメーターの真ん中に止まっても他の音とブレンドしません。それは音楽をするための音ではないのです。
 良い音程と感じるのはストレスのない自然な音です。そのような音を出して始めて音程が高い低いと判断できます。ですからチューナーとにらめっこして練習しても何の意味もありません。むしろ、強引にメーターの針を真ん中にしようとしてしまい、音色に注意が行き届かず逆効果です。

金管楽器の倍音の特徴

 前述したピアノを使った練習でペダルを踏んでトロンボーンでロングトーンをした時、他の音がピアノで響くはずです。良い音ほどたくさんの音が響きます。この音の正体は倍音です。倍音とは簡単に説明すると振動数が整数倍で増えていく音程の事を言います。
 金管楽器の音は倍音で構成されているのでこの仕組みを理解すると音程を取りやすくなります。
 トロンボーンはB♭管なので1ポジションのB♭を基音(第一倍音)とし、その上に第二倍音、第三倍音と続きます(譜例1)。ここで注意する点は倍音によって、音程が少しずつ高くなったり低くなったりします(譜例2)。正確な音程を得るにはこの音程の高低を考え、ポジションを微調整しなければなりません。どの程度変化するかは楽器によって差があるので自分の楽器の特徴をよく把握してください。そしてこの音程のずれは1ポジションだけでなく、他のポジションも同様に微調整しなければなりません(譜例3)。

平均律と純正律

 この言葉は一度は聞いたことがあると思います。音階を構成する音程の調律の種類です。トロンボーンはハーモニー楽器で純正律を出しやすい楽器です、これをしっかり理解すると美しい和音を造りやすくなります。
 平均律とは1オクターヴの振動数を12等分しそれを半音と定めた音階です(譜例4)。
 純正律とは純正音程で音階を構成しています。純正音程とは、人間の耳には2つの音の振動数が簡単な比になっているほど協和して聞こえます。例えばドとソは完全5度の音程ですが振動数が正確な2:3のとき純正な完全5度音程といいます(譜例4)。純正律で和音を組んだ時、純粋に美しい響きがします。しかし純正律でピアノを調律すると1つの調性だけ純粋な響きがして、他の調性では使い物になりません。
 平均律では1オクターブを12等分した半音の7個分が完全5度なので正確な2:3にはなりません。他の音程間でも簡単な比にはなりません。しかしこのずれは微妙なのでピアノの調律などは平均律で、どの和音でも平均的に響くのです。

純正律の捕まえ方

   ピアノの調律は平均律なので、純正律を捕まえるのは慣れないと難しいものです。ここでは前述したピアノを使った耳のトレーニングを使います。静かな部屋でペダルを踏んでB♭音とF音を弾き、その響きに溶け込むようにペダルを踏んだまま、D音をトロンボーンで吹きます。十分溶け込んだ音で出せるようになるまで繰り返し練習し、美しいハーモニーになったら初めてD音をピアノで弾きます。ピアノで響いているD音より明らかに低いことが実感できます(譜例5)。
 この練習はある程度平均律で演奏できるようになってからして下さい。いきなり練習してもなにも効果もありません。いつも良い音色でよく聴きながら練習しましょう。
 譜例6はセクション練習の1例です。パートを入れ替えたり、違う調、パターンを変えるなど色々工夫して練習すると、素晴しいトロンボーンセクションに成長します。

今月のおすすめCD

THE BEATLES/1962-1966「赤盤」(東芝EMI TOCP-8010.11)
THE BEATLES/1967-1970 「青盤」(東芝EMI TOCP-8012.13)
言わずとしれたザ・ビートルズの「赤盤」「青盤」で、解散後の1973年にメンバーのジョージ・ハリスンが選曲したザ・ビートルズの唯一の公式ベストアルバムである。ザ・ビートルズは後の世代のミュージシャンのほとんどに大きな影響を与えた。又、彼等の音楽はクラシックの影響を受けているのも事実である。このアルバムは今聴いても新鮮であり、クラシックを専門に演奏する我々にも刺激を与えてくれる。彼等のレコーディングではわずか4トラックの機材であった。なのにこのようなサウンドを創った創造力は大きな驚きであり、音楽とは機材でなく創造力であるという事をつくづく感じる。