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第10回 アンサンブル

音をブレンドさせよう

 こんにちは、音色の具体的なイメージは湧いていますか。イメージはいつも新鮮でみずみずしい状態でいましょう。

トロンボーンのルーツ

 今月のテーマはアンサンブルです。トロンボーンはアンサンブル楽器と言われ、トロンボーンのソリストは世界的に見てもほんの数人しかいないことでも証明されます。では、いつぐらいからアンサンブルをしていたのでしょうか。
 トロンボーンの原形のサックバットは15世紀に完成され16世紀初めにはほとんど現在の形となり、教会で賛美歌の伴奏でハーモニーを付け、神聖な楽器として扱われてきました。ドイツの古い石造りの教会で演奏すると、帰るべき所に帰ってきたと感じ、その空間は音色を導いてくれます。トロンボーンは最初からアンサンブルをする楽器として発達したのです。

アンサンブルとは

 アンサンブルとは2人以上で演奏することで、ブラスアンサンブルのような室内楽はもちろん吹奏楽、オーケストラも大きなアンサンブルと考えます。慣用語として演奏のバランスや統一性を指します。ではアンサンブルをする上での考え方、注意点を解説しましょう。

音をブレンドさせる

 良いアンサンブルをするにはこれに尽きます。音をブレンドさせると言っても、ブレンドされた音色のイメージがなければブレンドできません。毎月書いていますが、いろいろなプロの演奏を聴きましょう。
 ブレンドされた音色は2人以上で演奏しても新しい1つの楽器として聞こえてきます。トロンボーンで三和音を演奏した時、3つの音が聞こえるのではなく1つの音の塊として聞こえます。これはトロンボーン同士だけでなく他の楽器とでも同じ事ができます。では音をブレンドさせるにはどうすれば良いのでしょうか。

周りの音を聴く

   音をブレンドさせるには周りの音を聴くのが第一歩です。そして聴いた音に自分の音を合わせます。音量、音程、アタック、音の長さ、余韻、音の形など、すべて同じにします(譜例1)。基本的に1番トロンボーンに合わせるようにし、1番トロンボーンは1番トランペット、1番トランペットはコンサートマスターに合わせます。この事から各セクションの1番奏者は音の処理(長さ)、音楽の流れ、方向、和音の構成、ほかのセクションとのバランスなど考えなくてはなりません。
 ほかの奏者も聴くセクション、考える事がたくさんあります。まず他のセクションで同じ音、同じフレーズを見つけるのが最初です。そしてそれに合わせるようにします。事前にスコアを見てチェックしておけば最良です。
 2番奏者は1番奏者が演奏しようとしている事を瞬時に正確に合わせ3番奏者に演奏で伝えます。言葉で書くと簡単ですがトロンボーンセクションのサウンドを良くも悪くするのも2番奏者の肩にかかっています。オーケストラではベテランの経験を積んだ奏者がこの席に座っています。
 バス・トロンボーン奏者は主にファゴット、コントラバス、バスクラリネット、バリトンサックス、チューバなど低音楽器を聴くようにします。特にティンパニーを良く聴いて演奏するとバンド全体のサウンドがまとまりやすくなります。これらの楽器の音色がブレンドすると幸せな気分になります。また上級者はコントラバス(弦楽器)のボウイングを意識すると音楽の流れが良くなります。簡単に説明すると、ダウンボウははっきり大きめ聴こえアップボウは柔らかく小さめに聴こえます。例えばマーチの頭打ちなどが理解しやすいでしょう(譜例2)。
 音程は1番奏者も低音を聴いて合わせます。ですからバス・トロンボーン奏者はいつも正確な音程で演奏し、バンド全体の音程(特に上記の楽器)を把握する耳と注意力が必要です。 
 一昔前は1番奏者は高めに、3番奏者は低めに音程をとると合いやすいと言われた時代もあったようですが、ナンセンスです。トロンボーンの上にはトランペットが、下にはチューバが存在しますので、そうしてしまうと、音はブレンドしなくなりバンドのサウンドが崩壊してしまいます。

アインザッツの合わせ方

 アインザッツとは音の出だし、アタック、縦の線を指します。これがずれてしまうと、どんな良い音で演奏してもブレンドしません。逆に合っていれば何となくブレンドしているように聴こえてきます。mpでティンパニーを叩いた音をイメージすると美しいアタックになります。
 アインザッツを合わせるにはブレスを合わせます。「ブレスをする。」ということは合図を出しそれに応えるという事です。例えばじゃんけんをする時、お互いに「じゃんけんぽい」と言い同時に手を出しますがそれと全く同じ理屈です。
 日常の生活で息は止まらないように、ブレスは常に自然な状態でします。息を吸ったら止めずにすぐ吐きます(図1)。楽器を演奏するときはその息の量が日常生活より多く、さまざまなテンポでするというだけです。
 音楽の中でブレスをするときはテンポでブレスをすると流れにスムーズに乗れます。息は吸ったスピードと同じスピードで吐き出されるのが一番自然です。いつもこれを心がけていればストレスのない音色で、その場面にふさわしいスピード感の音が出せます。

演奏中の信号

 演奏中は当然話をすることはできません。前述したブレスを合わせるのも一つの信号です。音だけでなく微妙な動き、スライドの上下、足踏みなども一種の信号、合図です。本人は何気なく動かしたつもりでもその影響は大きい場合があります。音楽の流れの中で動いた場合は良い方に影響が出ますが、流れに逆らって動いてしまうと流れは乱れてしまい、最後には崩壊します。そのことに気が付くのが第一歩です。
 周りの音を聴くと書いてきましたが、あなたが演奏した音は必ずだれかがそれを聴き、その音に合わせようと努力しています。ですから何の考えもなしに演奏すると周りは戸惑ってしまいます。常に全員で音楽を造っている事を考えましょう。

今月のおすすめCD

ルチア・ポップ/ドイツの子供の歌(ORFEO  C078-831B)
ソプラノ歌手のルチア・ポップがドイツで昔から歌われている童謡を歌っている。「ちょうちょ」「ブンブンブン蜂がとぶ」など、誰もが知っている曲ばかり23曲録音している。これらのどの歌も美しく穏やかなメロディーを持ち、ポップは優しく楽しく歌いこんでいる。聴いていると穏やかな気分になり音楽の原点はやはり歌である、というのが感じられる1枚。
エーリッヒ・クンツ(バリトン)/ウィーンの歌(ADD 90012)も一聴の価値あり。